古くから日本人になじみ深い食べ物「干し柿」の種類とその製法

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干し柿は、人によっては生の柿よりも食べる回数が多いという人もいるかもしれません。平安時代には干し柿が作られていたそうですから、日本人の食生活に古くからなじみ深い食品になります。

その干し柿も、種類や作り方となると、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか

干し柿のトリビアあれこれ

甘くするために柿を干す

根本的な質問になりますが、干し柿は、なぜ干して作るのでしょうか?
それは、柿の渋みをとるためです。柿はもともと渋柿が普通で、甘柿は後からできた品種です。渋柿を食べるためには独特の渋みを取り除く必要があり、それには干すのが簡単だったというわけです。

甘い干し柿を作りたかったら、最初から甘柿を使ったら?というのもよくある質問ですが、干し柿には渋柿が適しています。それは、渋柿は甘柿よりも糖分を多く含んでいるからです。干し柿に適した品種としては、蜂屋柿、平核無(ひらたねなし)、甲州百目、西条、美濃、三社などが知られています。

使う柿の種類によっても干し柿の形や大きさが変わってくるのですが、製法でも種類があります。干し柿の種類として代表的なものは、あんぽ柿、ころ柿でしょうか。

あんぽ柿は、水分が50%程度残っていてやわらかいのが特徴です。皮は少し硬めですが、中身はねっとりとして甘味が引き立つ食感です。
ころ柿は、やわらかく干した柿をむしろの上で転がして丸い形に整えたもので、より手間がかかっているので高級品となっています。ころ柿の水分量は約25%です。

ブランド干し柿の種類

全国での柿の生産は、1位から順に、和歌山県、奈良県、福岡県、岐阜県と、西日本で占められているのですが、干し柿の生産となると、1位から、長野県、福島県、山梨県と、中部から東北にかけてが多くなります。
このような地域では、各地で地元特産の柿を利用した干し柿がブランド化されており、硬さや甘さがそれぞれ違った独自性を持っています。いくつかご紹介しましょう。

干し柿の生産1位の長野県の干し柿として有名なのが、「市田柿」です。特産の市田柿で作ったころ柿は、高級干し柿として全国に知られています。
山形県の上山市では、紅柿で作った「紅つるし」、平核無柿で作った「蔵王つるし」が有名です。紅つるしは、つるした状態を連想させるような細長いビニールに干し柿を詰め込んで販売している点もユニークです。
富山県の福光町、城端町は、三社柿で作った「富山あんぽ柿」、石川県の志賀町は、最勝柿を使用した「ころ柿」が有名です。

一般的な柿渋を作る手順…ブランド干し柿でも家庭で作る干し柿でも、製法はおおよそ共通しています

干し柿の作り方①柿すだれ

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干し柿を作るための渋柿は、熟したものを11月上旬に収穫します。皮はうすくむき、柿すだれを作ります。ひもに数個から10個以上の柿を1列につりさげ、それを並べてつるすと、ちょうど柿のすだれのようになるわけです。

昔から民家の軒先につるされた柿すだれは、秋の風物詩になっていました。

現在は、衛生的な観点から、商用の場合は、屋内やビニールハウスの中で行われている場合も多くなっています。

早く干すには直射日光が良いと思いがちですが、直射日光は表面だけを乾燥させてしまうので、陰干しでじっくり乾かします。乾燥に時間をかけることで、水分が中から抜けて、甘味も増します。この水分が抜ける過程で、干し柿の甘味にかかせないタンニンの不溶化が進みます。このように渋みのもとであるタンニンが不溶化することで、口に入れても苦味が溶け出ず、甘味だけを感じることができるのです。

干し柿の作り方②硫黄くん蒸

次に、二酸化硫黄の煙でくん蒸していきます。この作業により、本来の柿のオレンジ色が残りますが、この工程を省くとタンニンの酸化とともに色が黒くなってしまいます。また、硫黄でくん蒸することにより、虫よけやカビの防止にもなります。

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また、硫黄くん蒸をする前の段階でも、すでに渋みは抜けているので食べることができます。
ただ、その状態では長持ちしないので、一般に販売されているものは、多くが硫黄くん蒸によって保存がきくようになっています。

家庭で干し柿を作る場合は、硫黄くん蒸は難しいかもしれません。その場合は、つるす前に柿を沸騰した湯に5秒程度つけるだけでも殺菌消毒ができます。

干し柿の作り方③完成!

乾燥が終わると、柿すだれから外し、ドラム式の容器の中で混ぜる、柿もみを行います。家庭で作る場合は、つるしている間に数回に分けて指でもむだけでも良いでしょう。もむと、乾燥が早く進み、出来上がりも早くなります。
これにより、柿がほど良いやわらかさになり、中の糖分が外へ出てきます。
柿もみの終わった柿を風にあてると、表面に出てきた糖分が固まり、干し柿の特徴である白い粉になるのです。

あんぽ柿は、乾燥を短くし、水分が多く残っている状態で完成となりますし、ころ柿は、より乾燥させ、最後に形を整えて完成となります。

干し柿の保存方法

干し柿は、そのままの状態でもしばらく日持ちがしますが、長期に保存したい場合は、冷凍がおすすめです。1個ずつラップにくるみ、冷凍しましょう。2か月程度は保存できて、自然解凍で食べられます。

干し柿は、生柿よりもビタミンCは減っていますが、水分が少ないために高カロリーで、不溶性の食物繊維が豊富です。二日酔いへの効き目も変わりません。栄養たっぷりの甘いドライフルーツは、晩秋から冬にかけての豪華なデザートになるでしょう。

日本で古来から楽しまれてきた伝統的な甘味を、ぜひ味わってみて下さい。

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