甘柿と渋柿の違い、あなたはいくつ答えることができますか?
秋の味覚と言えば柿!とばかりに、巷でも柿を使ったスイーツを見かける機会が増えてくる季節だと思います。
そしておそらく、柿と言えば甘柿と渋柿があるということを思い出す方も多いのではないでしょうか。
「熟すと甘いのが甘柿、渋いのが渋柿」「渋柿は干柿にする」なんて答える方はたくさんいらっしゃるでしょうが、実際のところ、甘柿と渋柿のこのような違いはなぜ起こるのでしょうか。
甘柿が先か渋柿が先か?なぜ栽培地がちがうの?
甘柿と渋柿はキャベツとニンジンのように違う種類なのでしょうか。
それとも、青首大根と桜島大根のように同じ種類ではあるけれども違う品種なのでしょうか。
答えは後者で、「種類は一緒だけれども品種が違う」です。
柿のふるさとは中国大陸とされていて、かつてはすべてが渋柿でした。
古事記や平安時代の文献にも「柿」は登場しますが、現在のような甘柿ではなかったのです。
甘柿は渋柿の変種で鎌倉時代に初めて現れ、西日本を中心に広くされるようになり、現在も栽培の中心は西日本の温かい地域です。
一方、渋柿は新潟県など比較的涼しい地方でも栽培されています。
これは、甘柿は寒い地方で栽培すると果実に渋みが残るためです。
渋みの抜け方に違いがある?
実は、甘柿と渋柿はそれぞれ2つのタイプに分かれます。
具体的には、甘柿は「完全甘柿」と「不完全甘柿」に、渋柿は「完全渋柿」と「不完全渋柿」にそれぞれ分類されます。
これらのタイプは脱渋性、つまり渋みが抜ける性質によってカテゴリ別に分けられているのです。
例えば、甘柿は樹になっているときに渋みが抜けていきますが、その中でも完全甘柿は種の有無に関係なく渋みが抜ける品種のグループを、不完全甘柿は種がつくられなければ渋みが抜けない品種のグループをそれぞれ指します。
完全甘柿として有名なのが甘柿の王様にして抜群の知名度を誇る富有柿のほか次郎柿が、不完全渋柿には西村早生や禅師丸があります。
一方、渋柿は樹になっているときには甘柿とは異なり渋みが抜けません。
そのため焼酎などのアルコールや炭酸ガスを使い、食べるために人の手で渋みを抜く「脱渋処理」を行う必要があります。
「不完全渋柿」では果肉の一部の渋が抜けますが、「完全渋柿」では成熟しても渋が抜けないのが特徴です。
不完全渋柿には有名な平核無や甲州百目、完全渋柿には西条柿や干柿で有名な市田柿が知られています。
樹の上で渋みが抜ける?抜けない?いったい何が違うのか
渋みが抜けるか抜けないかは、何によって変わるのでしょうか。
不完全甘柿および渋柿では、アセトアルデヒドなどによって渋みの原因物質であるタンニンの構造が変化し、とけなくなるためとされています。
アセトアルデヒドなどは種子から発生するとされているため、種子がない場合「不完全甘柿」では完全甘柿のように樹上で脱渋が起こらないのです。
では、完全甘柿の脱渋メカニズムは不完全甘柿や渋柿と何が違うのでしょうか。
実は、富有柿のような完全甘柿のタンニンは不完全甘柿や渋柿のタンニンとは違うものであるとされています。
このタンニンはより分子量が小さく、他の物質と反応しにくいという性質があると言われています。
ちなみに完全甘柿における脱渋の理由は、タンニンが蓄積するタンニン細胞の発育が不完全甘柿や渋柿よりも早い時期に停止するため、果実中に占めるタンニン細胞の割合が低くなることです。
タイプで異なる脱渋メカニズム!どんな味、どんな食感?
柿といえば甘柿と渋柿で分けるのがメジャーですが、脱渋のメカニズムを見てみると甘柿と渋柿よりも「完全甘柿」と「不完全甘柿」、渋柿に分かれるようです。
種があるかないかで渋みの抜けが変わったり品種で化学物質の性質が変わったりと、一口に「柿」と言ってもそれぞれが全く異なるのです。
全部で1000種類以上があると言われている柿ですが、甘柿か渋柿ではなくこの2タイプで食べ比べをしてみるのもおもしろそうですね。