柿渋には、柿渋タンニンと呼ばれる成分によって、さまざまな人体に対する効果があることが知られています。
柿渋は民間療法ながらも、古くから健康を補助する用途でも多く使われてきました
直接飲むことによる効能の代表的なものは血圧を下げる効能で、脳卒中など高血圧に関係してくる疾患全般に対して効果があるといわれています。
ポリフェノールの一種でもある柿タンニン
ポリフェノールの一種でもある柿タンニンでは、赤ワインで話題になったように抗酸化作用が見逃せません。生活習慣病の源だとされる活性酸素は、分解酵素が加齢と共に減少することで体内に増えすぎ、不足した分解酵素の代わりとして柿渋を飲む健康法があります。
タンパク質と結び付く収斂(しゅうれん)作用と抗菌性
タンパク質と結び付く収斂(しゅうれん)作用と抗菌性を利用し、虫さされ、やけど、あかぎれ、しもやけといった、皮膚のトラブルに対する塗り薬として使用されてきました。
二日酔いや悪酔いの防止効果も知られており、この点については効果はあっても解明まではされておらず、柿タンニンが胃や腸でタンパク質と結合して被膜を形成し、それによってアルコールの吸収を妨げているのではないかと考えられています。
タンパク質を変性させることにより組織や血管を縮める作用である。渋味を示すことからアストリンゼント(astringent)効果とも呼ばれる。
収れん作用を持つ物質には止血、鎮痛、防腐などの効果があり、化粧品や医薬品として用いられる。
医薬品が日常的に溢れている現在では、あえて柿渋を使うことはないですが、昔はこうした柿渋の持つ万能性をうまく利用し、健康に役立てていたのです。
ほとんど化学製品に置き換わった今になって、自然界に存在する柿タンニンの力が注目される発見があった
ノロウイルスに対しても抗菌作用を発揮することが判明
柿渋の持つ抗菌性は、防腐用途としての塗料や染料での使用などからも明らかでしたが、最近の研究では、食中毒の半数を占めるといわれている、ノロウイルスに対しても抗菌作用を持っていることがわかりました。
アルコール除菌が効かないノロウイルスは感染防止が困難で、症状も重いことから、早急に安全性の高い消毒剤が求められており、そこに柿渋が登場したというわけです。
インフルエンザウイルスを含む多様なウイルスも撃退!
そして驚くべきことに、植物に多く含まれるタンニンの中でも、柿タンニンがインフルエンザウイルスを含む多様なウイルスに対して効果があり、先人達がなぜ柿渋を抗菌や防腐目的で利用していたのか、科学的にも証明された結果になりました。食品由来である柿タンニンは、極めて安全性が高いことから、今後ますます利用されていくことになりそうです。
坂口教授らの研究グループでは、ネコカリシウイルス、ネズミノロウイルス、をはじめとしてポリオウイルス、コクサッキーウイルス、アデノウイルス、ロタウイルスの非エンベロープウイルス、ヒトインフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、水疱性口内炎ウイルス、センダイウイルス、ニューカッスル病ウイルスのエンベロープウイルス、計12種類のウイルスを用いて、柿渋を含む植物由来タンニン7種類の抗ウイルス能を検証しました。その結果、柿渋が唯一すべてのウイルスを完全に不活化しました。